本展は、デザインとアートの境界を横断しながら続けてきた試作と観察と成果を、一つの場に集約したものである。
デザイナーとしての造形研究と、教育者としての思考整理を同じスケールで提示し、今の時点で言語化できる方法と成果を可視化している。

展示は複数の系列で構成する。
ピンと糸で表現した半立体のドローイングを壁面で展開し、開閉やねじれなどの変形則を読み取れるようにした。2Dや3Dといった次元的な制約から離れ、下部に配した彫刻作品につなげている。

開発した、鋼板を手折りできる技法を用いて制作した彫刻は、折り上げたモジュールを反復・回転させたもので、柱状、環状などの形態へ移行するプロセスを示す。素材には溶融亜鉛めっき鋼板にパーカライジング処理を施したものを選定。リン酸塩がまとわりついた表面をそのままテクスチャとして扱った。

モノクロームのドローイングは、紙への作為の介入の度合いを変化させ、その深度の違いを並べた。
アクリルスプレーを充満させた箱から空気を吸引する過程で、その粒子を紙に定着させるなど、空気や水などの流体に描かせる手法を模索した。

エナメル線で作ったの小さなコイルを並置したインスタレーションは、単純な電子制御が引き起こす部材の動作が、生命体やそれらの群れを思わせる。これらを、人工と自然の境界をを探る基礎実験として位置づけた。

あわせて、デザイン開発に携わった製品や家具も展示し、造形研究と産業デザインの往復を示している。
タイトルに記す"borders"は分野や役割の境界を指し、複数の実践を同列に置くことで、その間を往来し、越境する姿勢を明確に示すことを目的とした。

金属作品の製作には株式会社山形メタル、電子制御を用いたインスタレーションは学内の教員である堀内准教授との共同研究、木工パーツにはプロダクトデザイン学科技官の柏倉氏の協力を得た。また、製品展示には株式会社山本製作所の協力を受けている。