top of page

KAKULULU

池袋東口の再開発が進む一角で、ツタ植物が鬱蒼と絡みついて異彩を放つ、RC造の築約45年あまりの雑居ビルを一棟まるごと改修した複合業態の計画。

B1は展示やライブが行えるギャラリー空間、1・2階はカフェ、3・4階は貸事務所として運用し、街にひらいた複合拠点とした。店主は音楽誌への寄稿などで知られ、新しい音楽文化の発信基地として機能している。各種メディアのロケ地にも選ばれ、星野源の対談集『音楽の話をしよう』の表紙にも用いられた。

東京に住むクライアントと、山形に住むデザイナー。
その距離を埋めるために用いたのが、音楽だ。
我々二人を間接的に結びつけた、音楽家の伊藤ゴロー氏。彼の、当時リリースされたばかりのアルバム『GLASHAUS』の1曲目に収録されている"Glashaus"を題材にイメージを膨らませた。

設計方針は、建物がもともと持つ風合いを損なうことなく、清廉さを付加すること。そして、無音でも音楽が聴こえる空間を作ることである。

狭い1階の路面部分をさらに減築し、小さなテラスを設置。この中間領域が、視線を外に向かって段階的に誘導し、心理的な狭さを解消した。減築によって路面からオフセットした新規の外壁面に取り付けた観音開きのドアや、面積を絞った南側のFIXから柔らかく滲む環境光が、1階部分のクリーンな陰影を作り出す。

コンパクトな厨房には機能を濃縮し、カウンターはファサードからの繋がりでレッドシダーの立ち上がりとホワイトオークの天板。既存建物と新規造作部の密着感を重視した計画とした。

階段を登り上がると現れる明るい2階の客席は、高さや奥行きの異なるテーブルと椅子を造作して組み合わせ、狭小カフェには似つかわしくない、ゆとりある座席レイアウトとした。狭い空間の中にも余白を重視して設けた客同士の間が、空間に透明感を与え、その価値を高める。

建物が積み重ねてきた時間に敬意を払い、そこに新たに介入させる要素を丁寧に選び、つなぎ合わせること。
単純で純粋な一手を連続させることにこだわった。

KAKULULU

deta

2015年

東京都,豊島区

credit

施工 : cocona

写真 : 渡邉吉太

 

bottom of page