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FLAT FAN

建築において、私たちが常に向き合うのは、空間に宿る意味をいかに鮮明に描くかという問いである。そのためには、不要な要素を削ぎ落とし、ノイズを排し、空間そのものの力を際立たせる必要がある。

本来であれば、空調や照明、スイッチやコンセントに至るまで、その場所に呼応するかたちで設計したい。しかし現実には、それは叶わない。私たちは、膨大な既製品の中から、できるだけ空間に調和し、その静けさを乱さないものを選び取ってきた。

換気装置には、吸い込み口のスリットという宿命的な造形がつきまとう。換気量と開口面積の兼ね合いから、パネルには無数のラインやグリッドが刻まれる。どれほど繊細に壁や天井を仕上げても、この装置によって生じる視覚的なノイズからは逃れられなかった。

壁は大切だ。

キャンバスの外側の物語を想像するための余白であり、心を鎮める無音の隙間であり、窓越しの風景を手に入れる器でもある。

壁の存在が、ほとんど気配を消すほどに澄み渡ること。そして、その壁の一部として、静かに呼吸を守ること。これが、FLAT FANに見出した、換気扇のあるべき姿だ。

株式会社 佐原

deta

2025年

山形県,米沢市

credit

 

写真 : 志鎌康平

 

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