top of page

西山杉の棺

山形県では古来から、村山盆地を北上する最上川を境に、奥羽山脈系を東山、出羽丘陵系は西山と呼ばれてきた。「西山杉」とは、西山周辺の西村山地域から産出される杉材である。

「父が亡くなったとき、郷里の山で採れた木を使って作られた棺で送り出せていたら」
父から受け継いだ林業を営むクライアントが、山林資源の活用も視野に入れて始めたプロジェクト。
クライアント自らが伐採し、乾燥・製材まで行った西山杉で棺を作る。

リサーチを進めていくと、国内で使用される棺のほとんどは中国産の合板を芯材に作られた塗装品であることが分かってくる。
「自分の山で採れた木を使って作られた棺で...」
火葬され、煙となる故人と、それに最後に寄り添う棺が同じ地域で育まれたものであったら。
これは単なる物質的な問ではなく、送り出す側の心情を深く表す言葉のように感じられた。

山形の盆地を取り囲む山並みを参照し、蓋の造形は中央に稜線を持つ切妻形状とした。
これは、厚みのある材でしか形作ることのできない形状である。製造プロセスは、一般的な木工設備で対応可能となるように設計。板接ぎから切削までが、ごくシンプルなものである。

故人の郷里で育った木が、最後の時間を支える。その経緯が感じられるように、素材の香りと手触りをそのまま残している。

有限会社 庄司林業

deta

2021年

山形県

credit

 

写真 : 根岸功

 

bottom of page