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名月荘 梔
山形・かみのやま温泉の名旅館 名月荘の客室「梔」のリニューアルプロジェクト。
専用の庭に面するこの場所が持つ籠もった心地よさを、滞在の体験の密度に転換することを目指した。
既存のダイニングと畳敷きの寝室は壁と襖で仕切られていたが、近年のニーズに応じてベッドルームを設け、ダイニングと連続性のある空間とすることが求められた。一方で、朝食の配膳時には寝室のプライバシー確保も必要であった。そこで、二間分のベッドルームの開口のうち半分を竹格子の引き戸、もう半分をガラスのFIX壁とロールスクリーンとすることで、視線の抜けと気配の調整を両立。建具を閉じれば音と視線を遮り、開け放てば二つの空間が緩やかにつながる。竹材は脱着式とし、ガラス面の清掃性にも配慮している。
仕上げは、壁・天井を土系左官の粗い表情で統一し、既存の梁や木部と調和させて素材の素地を生かした。寝室側は天井を一段低く抑え、ヘッドボード上部に間接照明を組み込み、フットライトと合わせて落ち着いた光のレイヤーを作った。調光式の照明器具を天井を彫り込んで設え、読書に十分な光を確保しつつ光源が直接視界に入らないよう配慮した。エアコンは木ルーバーで覆い、設備要素を背景化している。
土、木、竹、紙といった素朴な素材が、庭からの柔らかな環境光を受けて発色し、低い天井高と相まって籠もるような安心感を生み出す。
明るく健やかな印象を与えようとする現代の住宅空間とは真逆の、陰影がもたらす安らぎを存分に堪能し、古の美意識に浸ることのできる客室となった。
名月荘

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