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ふたつの家

ふたつの資産
日々の営みに必要なインフラと、最低限ながらも充実した居室を併せ持つ「不動産/コア/住宅」と、家族構成の変化に応じて柔軟に抜き差し可能な「動産/アウター/トレーラーハウス」を組み合わせることで、小さく住みながらも住まい全体がダイナミックに可変する、新しい住宅の在り方を模索した。


ふたつの軸
敷地は東西に長い約250坪で、南側の一部を重機による除雪動線として確保すると、残された敷地はさらに細長い形状となった。
この敷地条件に素直に応答し、建物を東西方向に配置していくと、窓の先には工場や隣家、街道といった、借景としてはネガティブな要素が多く見えてくることが課題となった。そこで、一体のボリュームとして構想していた建物を途中で引き剥がし、枝分かれさせる構成を選択した。
北東方向に広がる蕎麦畑や森、その奥に連なる奥羽山脈の美しい景色に正対するよう、景色に素直に向いたボリュームを一つ目の軸(北棟)とし、LDKを配置して家族が集う場所とした。一方、敷地形状に従い東西に細長く伸びるボリュームを二つ目の軸(南棟)とし、主寝室に加え、トイレ、サニタリー、浴室といった生活インフラを並べた。

冬季の米沢では、西に聳える斜平山(なでらやま)から「なでら下ろし」と呼ばれる、雪を多く含んだ強い西風が吹き下ろす。枝分かれした二つの軸の交点に据えたエントランスは、この風に対して、両棟が擁壁のように身を構えることで守られている。


ふたつの明暗
引き剥がされた二つの棟では、一日の時間の流れの中で、光の密度が切り替わる。
朝、家族が集まる時間帯にはダイニングに朝日が差し込むが、それ以降は周囲に取り残されたかのような陰影が現れ、環境光のみが階調を変えて空間を満たしていく。
朝を過ぎると、サニタリーには鮮やかな日差しが入り込み、太陽光は放射式冷暖房のルーバーによって一部遮られながら、玄関やリビングへと滲むように伝播していく。

どのような環境においても起こり得る陽の巡りによる明暗の変化を、住まいの中でより顕在化させることを試みた。


小さく住む
限られた床面積の中で、スペースを削るのではなく、空間の使い方と見え方の組み替え、または組み合わせによって住まいを成立させている。
一つの空間に単一の役割を与えるのではなく、複数の役割を兼ね合わせることで、動線そのものを居場所として取り込んでいる。たとえばダイニングとクローゼットを隣接させ、生活の流れの中に収納へのアクセスを溶け込ませることで、独立した通路を必要としない構成とした。玄関はリビングと明確に分けられることなく連続し、廊下は拡幅されてサニタリーとしても機能する。

収納は特定の場所に集約せず、住まいの各所に点在させ、それらにアプローチするために必要な通路を、他の行為や居場所と共有することで、余剰なスペースを生まない構成としている。
その結果、この住宅には明確な室名を持つ居室が少なくなった。玄関は「玄関のような空間」として用途を固定されることなく、リビングと外部との中間領域を形成し、用途を与えなかった余白はすべてリビングとして定義する。

空間を細かく分けることで広さを失うのではなく、役割を曖昧に重ねることで、視覚的、体感的な広がりを獲得することを意図している。

アルス株式会社モデルハウス

deta

2025年

山形県,米沢市

credit

施工 : 株式会社網代建設

写真 : 根岸功


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