和食とワインのマリアージュを軸に、出汁を基調とした料理と適切な一杯を出会わせる場として計画した。

1階は厨房と客席が向き合うダイニング、2階にはワインとチーズのショップ「YAMAGATTA」を併設。ウォークインのワインセラーでソムリエと共に銘柄を選び、そのまま食事に合わせて楽しめる導線を組み込んだ。

店づくりの中心は、料理人の手元と客席のテーブル面を同一高さに揃えたフラットなカウンターである。段差や見切りを設けず、一枚の天板が厨房から客席へ連続することで、盛り付けの所作が卓上へ延長して見える関係をつくった。テーブル群も同寸法・同仕上げで統一し、視線が自然にカウンターへ集約される。

内装は既存のコンクリート躯体を現し防塵塗装。家具の木部や床はホワイトオークの無垢材にオイルフィニッシュ。階段や手すり、椅子のフレームなどの鋼製の部材には蜜蝋塗りとするなど、和食の心に倣い、素材に着色せず、その発色だけで空間を組み立てた。
2階には、常時適切に温度管理されたウォークインワインセラー。その脇に客席を配置し、棚に並ぶたくさんのワインを眺めながら選ぶ体験を支える。床仕上げと明度を1階から切り替え、会話と滞在に適した落ち着きを与えた。

ファサードは左官仕上げの壁に最小限の開口とサインのみ。内部の情報を抑え、わずかな緊張感をつくることで、店側も客も少しだけ襟を正して時間を共有できる場を目指した。